当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 あたしは生徒手帳を開いて、挟んでいたメッセージカードを葉月さんに見せる。

 まわりでお題を書いていた他の子も、
「え、なになに? バースデーカード?」
「当馬が用意したって? 見せて!」
 って集まってきた。


「これドイツ語で、誕生日おめでとうって書いてあるん? にしては長くない?」

 ひとりが、スマホの翻訳アプリを立ち上げて、メッセージカードにかざした。

「『僕の愛するカノンへ 誕生日おめでとう キョウジより』? やっば! 超ラブラブじゃん!」

「きゃー! あっつーい! うちも好きピからこういうのもらいたーい! 今の時代に手書きカードとか逆に良いじゃん」

 女子たちが黄色い声をあげる。 


 葉月さんはメッセージカードから目を離さずに、静かな声で聞いてくる。

「……華音ちゃんさ、やりなおしたいことって、ある?」
「なにを?」

 なんか唐突な質問だ。