当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 コンコン、と軽いノックの音がして、ママが入ってくる。

「華音、そろそろお風呂はいっちゃいなさい。って、ふふ。またそのカードを見ているの? 本当に響司くんのこと好きなのねー」

「へ!?」

「隠さなくていいわよ。だって、中学のときは暗い顔ばかりだったのに、最近の華音はいつもニコニコしてるもの。恋する乙女の顔ってかんじ」

 ママにはそう見えてるんだ。

 顔が熱くなる。

 中学のときは、同級生の子にいじわるされていた。

「わたしの沢にちかづくな!」って、言われてつきとばされることもあった。

 学校に行きたくない、オーストリアに帰りたいって、いつも思ってた。

 今は違う。
 キョウジといる時間が好き。
 ずっとこんな日が続けばいいのに。