当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 音楽室でピアノに向かっているキョウジは、ふだんののんびりした空気が消える。

 真剣な顔をして、鍵盤に指をおどらせる。

 オーストリアで暮らしていたとき、よくOma(オマ)がコンサートの楽屋に連れて行ってくれた。

 音楽の話はいつまでも尽きなくて、次の公演ではなにを弾くかなんて話題でもりあがる。

 音楽が好きで弾いて歌うひとたち、キョウジはあのひとたちと同じ顔をしている。


 もう何度も読み返している誕生日のカードをデスクライトにかざす。

 たぶん、すごくお茶目でいたずら好きな店長さんだ。

 教えられたこと信じて、そのまま書いちゃうところがキョウジらしい。

 読むたびに自然と顔がにやけてきちゃう。
 なんていうか、心がふわふわする。