当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「……いつのまに、ドイツ語勉強したの? あたし、嘘の恋人なのに。もらって、いいの?」

 華音はゆっくりと両手を伸ばして、プレゼントを受け取ってくれた。

  
 祝いたかったのは本当だけど、嘘の恋人ならここまでしなくてもよかったのかな。

 やっぱり、重かった?
 
 いまさら、不安と恥ずかしさが押し寄せてくる。

 声がうわずってしまった。

「あ、はは。昨日、このアクセサリー買った店の店長さんに教えてもらった。店長さんはヨーロッパに住んでたこと、あるんだってさ。今のお祝いの言葉も、うまく発音できてたかな? もしかしたら、間違えたかもしれない。一夜漬けだからちょっと自信なくて」


 言い訳する必要なんてないはずなのに、少しの沈黙にも耐えられなくて、思いつくまま口にしてしまう。

 今日は特別暑いというわけでもないのに、汗が止まらない。

 気まずい?
 いや、なんだろうこの胸が落ち着かない不思議な感覚。
 胸のあたりがざわざわする。