当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 僕は女の子に会釈する。

「……はじめまして。僕は当馬響司。沢と同じ四組なんだ」

「あたしは、アベ、カノン。華やかな音って書くの。一組。よろしく、トーマくん」

 どこか不思議なイントネーションだ。

 一言一言、ゆっくりと考えて選んでいる。

 名字がアベなら、親のどちらかは日本人なんだろう。

「もしかして、華音さんの名前をつけた人は音楽が好き? クラシックのカノンからつけたのかな」

 華音さんは懐かしそうに目を細めて笑う。

「うん、そう。オーストリアのDie(ディ)Oma(オマ)はオペラ歌手してた。すごく、歌がうまい。トーマくんは、音楽くわしいの?」

「四歳のときからピアノを習ってるんだ。僕の音楽の先生が、葉月のお父さん」

 手のひらで葉月を示すと、葉月は両手を華音さんにさしだした。

「はじめまして、華音ちゃん。私は吉田葉月っていうんだ。一組にフランス人形みたいなかわいい子がいるって話は聞いてたんだけど、華音ちゃんのことだったんだね。うわぁ、髪キレーイ。つやつや! どんなコンディショナーしたらこんなふうにきれいになるの? やっぱりすごくいいメーカーのなのかな。そのアウターもかわいい。どこで買ったの? おすすめのショップおしえて!」

「ええ、と……」

 矢継ぎ早に質問されて、華音さんがフリーズした。