当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 響司くんが横井くんにからかわれたとき、反論していた華音ちゃんを思い出す。

「キョウジはね! おうちで、二人きりのときは、子犬ちゃんみたいに、すっごくかわいく、あまえてくるのヨ!!」

 そんな響司くん、知らない。
 十年以上そばにいたのに、知らない。
 華音ちゃん、ずるいよ。

 華音ちゃんには、私が知らない姿を見せているの?
 なんで、私じゃないの?

 華音ちゃんと仲良くしてるところなんて、想像したくない。


 響司くんの背中が見えなくなっても、私は歩きだせずにいた。

 拳を強く握りすぎて、手のひらに爪が食い込む。
 きしむくらい歯を食いしばった。

 泣きたいけど、ここは外。
 人前。

 泣くわけにはいかない。
 こんなに良い天気なのに、私の心は土砂降りだ。