当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 ただ感動した。

 僕もあんなふうになりたい。

 ピアノを弾けるようになって、誰かに音楽を届けたい。

 嘘偽りない、僕の夢だ。

 ひとつひとつ思い返して、かみしめるように声に出す。
 
「だから僕も、言葉の通じない相手にも、音楽を伝えられるピアニストになりたいって思った」


 ……なんて、昔からの夢だけど、夢みすぎかな。

 自分で言っておいて恥ずかしくなってきた。

 僕は真剣にそう思っているのに、過去には『所詮ガキのおままごとだ』と笑い飛ばす人たちもいた。
 

 静かに聞いていた華音は、花が開くようにふんわりと微笑んだ。

「キョウジなら、できるよ」

 
 華音の言葉にはお世辞や迷いが見えない。

 心からそう思って言ってくれているんだ。

 それだけのことなのに、すごく胸が熱くなった。