当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「レオ。キョウジのじゃまするの、だめよ。おべんきょ中よ」

「むー。でも、きょーくんはじゃまって、いってないもん」

「キョウジは優しいから言わないだけよ。静かに、おえかきしてて」

 華音に言われても、レオはどこ吹く風。

「ね、きょーくんピアノのひとなんでしょ。おしえて!」

「……レオ、お姉ちゃんの言うことききなさい」

 お姉ちゃんと弟、真逆の意見にはさまれた。

「僕に気を使わなくていいよ、華音。音学教室に小さい生徒がたくさんいるから、僕、話し相手になるの慣れてるんだ。──レオ。一曲だけ弾くね」

 レオの頭をなでて、ピアノの鍵盤に指をのせる。 


 パッヘルベルのカノン。


 鍵盤の数が少ないおもちゃだから、右手のパートだけで弾く。


 明るくて、春の日差しの中をスキップしたくなるような、心おどる曲。


 小学生の時、コンクールで初めて金賞をもらった曲だ。

 華音は目を瞬かせて僕を見る。

 レオがぬいぐるみたちを抱えて、曲にあわせてはなうたを歌い出す。

 弾き終えると、二人分の拍手がひびいた。


「きょーくんすごいね!」
「楽しんでもらえてよかった」
「ねー、もーいっかい!」

 一曲だけといいながらもアンコールされて、三回弾いた。