当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 華音から聞いた住所をナビアプリに入れて、ルートをたどる。

「あ、響司くんだ。おはよー」

 駅近くで葉月に声をかけられた。
 中学時代のクラスメイト草凪(くさなぎ)マコトと一緒だった。
 

「わー、当馬くん、卒業式以来だね。なつかしい。また伸びたんじゃない?」

 草凪は相変わらずのようだ。
 ひっそりと教室の隅にいるような人間にも、当たり前のように話しかけてきて、輪に入れる。
 そういうところ、沢と気が合いそうだ。


「もし暇なら当馬くんも一緒に行かない? 中学んときのクラスメイト何人かで集まろって話してたんだ。当馬くんいたらみんなも喜ぶだろうし」

 なんて、笑顔で言われる。

 華音との約束があるから行けない。

 それに中学までの僕は、ピアノの練習にかまけてばかりいた。

 テレビもろくに観ないから、「昨日あのドラマ見たー?」なんていうささいな日常会話にも交じれなかった。

 だから僕が行っても、他のメンバーは微妙な空気になるだけな気がする。 

「いや、今日はこれから彼女の家でテスト勉強するから、またの機会にさそって」

 
 別の高校に行った元同級生にまで、この嘘を貫いていいか一瞬迷ったけれど、作り笑いしてごまかし、二人と別れた。