当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 とんでもない爆弾投下に、廊下がシン……と静まりかえった。

 窓の外を飛ぶ鳥の鳴き声が鮮明に聞こえるくらいだ。

 華音はかまわず続ける。

「あたしだけのWelpe(ヴェルペ)を! ほかのひとに見せるなんて、もったいないでしょ!!」 

「ちょっ、待って華音!」

 ハッタリにしたってそれはないだろう。

 僕は基本的に人と一定の距離を置いているし、甘えるような性格じゃない。

 信じてもらえるわけがない、そんなの。

 華音は「ほーら、キョウジ。いいこいいこー」
 なんて言いながら背伸びして、僕の頭をなではじめた。

 それこそ、子犬を撫でるような手つきで。

 恥ずかしいからやめてほしい。

 でも振り払ったら嘘だってバレる。

 時間にしたらほんの数秒のはずなのに、やけに長く感じる。

 横井は一瞬ぽかんとして、それから笑いをこらえながら、僕の肩を叩いた。

「……な、なんか、ごめんなー。人前ではかっこつけてたんだな。お、俺が野暮だったわ」

 周囲からも含み笑いが聞こえてくる。

「へー、当馬って家では子犬みたいなの?」

「真面目君かと思いきや、意外~」

 なんでこんな、突拍子もない嘘を信じちゃうんだよみんな。