当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー


 葉月は笑いながら、沢の消えていった廊下をみやる。

「……沢くんて、おっちょこちょいなの?」
「サワはひょっとこ?」

 華音が首を傾げる。
 どう伝えれば華音がわかりやすいかな。
 ミツキちゃんに話すような感じで言葉をかみくだいてみる。

「おっちょこちょいっていうのは。あわてんぼとか、忘れものが多いとか、そういう意味の言葉かな」
「おー。サワ、中学の時、よく宿題忘れていのこりしてたよ」

「ぷっ」

 華音の悪意無い黒歴史暴露トークに、葉月がコーラを吹き出した。

 あわててハンカチで机をふく。

「そっかー。あはははっ。すっごく納得。沢くんが先生に怒られてる姿目に浮かぶもん」

「……うん。沢ならやりかねない」

 今まさにストローをとり忘れて自販機に戻っているから、推して知るべし。

 そのあと沢がストローを片手に戻ってきたが、葉月が沢を見るたび笑いそうになっているからちょっと面白かった。