当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 そういえば葉月って炭酸が苦手だったような。

 僕のと交換したほうがいいかなとも思ったけど、ブラックコーヒーも得意ではなかった気がする。

 沢が善意で買ってきてくれたから、言い出せないんだ。
 眉間にシワを寄せながらコーラを飲んでいる。


「はー、わらったわらった」

 沢は目尻に浮かんだ涙を指でぬぐって牛乳パックを手に、硬直した。

「あ! ストローねえじゃん!」

「自販機にパック飲料専用のストロー取り出し口あっただろ。とり忘れたの?」
「うぁぁあ、そうだった! このまんまじゃ飲めねぇ!」

 半泣きで沢が駆け出して行くのを、笑って見送った。