当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 他の教室にもテスト勉強で残っている生徒が見える。

 みんな入学して初めてのテストだからがんばってるんだ。

 自販機のまわりに誰もいないのを確認して、やんわり沢にきいてみる。

「沢。せっかく一緒に勉強しているんだから、葉月に聞けばいいのに。仲良くなりたいって言ってたじゃない」

「あー、そ、それは、ええと……」

 沢は目を泳がせて、照れ笑いを浮かべる。

「クラスが違うから、机並べる機会自体がないじゃん。だから、同じ空気を吸って見ていられるだけで尊いというか」

「ピュアか」

 恋に悩む高校生というよりは、アイドルの推し活をする人の言葉に聞こえる。

 ライブ会場で生歌聞けるだけでごはん三杯いける、みたいな。

「まったく。なんのために四人での勉強会を提案したんだか。僕と華音、邪魔になってない?」

「いんや、勉強会を提案したのは葉月ちゃんだよ。俺は最初、四人で飯行こうぜって言ったんだ。けど、阿部が
「あたしはキョウジと勉強するから二人で行くといい」って断ったんだ。そしたら……」

「ご飯に行くんじゃなくて、四人で勉強しようって言い出したわけだ」

 なにしてんだろ、葉月。

 沢と二人でごはんにいけばよかったのに。

 まあ、葉月のことだから、「いきなりふたりきりは緊張するから無理だよー!」なんて考えていそうだ。

 僕が前に「僕にできることなら協力するよ」って言ったから、堂々と巻き込んだわけだ。