当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 スーパーは家から徒歩十五分ほどのところにある。

 店についたら、ドイツ語のメモを見ながらかごに商品を入れていく。

 ベーコンにじゃがいも、りんご、ハードチーズ。

 メモにはないけれど、華音がたまごもかごにいれた。

 僕らが日本を発つ前に母さんが伝授してくれたから、ウィーンにいてもたまご焼きを食べることができる。

【かわいいお嫁さんにたまご焼きの味を伝える】という夢が叶って、母さんはすごく喜んだ。

 華音が「あたしも、このだし巻きすごく好きなの」と言って週三は食卓にのぼる。

 買い物を終えて店を出ると、華音はクリスマスマーケットで足を止めた。

「キョウジ、あれ飲も!」

 いうが早いか、グリューワインを買って戻ってきた。

 湯気の立つワインに、ドライオレンジが沈んでいる。

 華音は一口飲んでから、僕にカップを渡してくる。

「キョウジも、飲んでみて。おいしい」