当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 先週のレッスンは、葉月に恋愛相談されたあとだった。

 失恋したなんて誰にも言わなかったのに、大地先生に見透かされたみたいでいたたまれない。

「責めているわけじゃない。響司くんはまだ十五歳なんだから、未完成なのは当然だ。空模様と同じで、今日嵐だったと思ったら翌日には晴れている。晴れたと思ったら夕方には土砂降りになる。葉月もよく百面相しているからね」

「葉月がそれを聞いたら怒りますよ」

「いやいや、この前なんて大変だったんだから。朝はめかし込んで元気に出ていったのに、帰ってきたとたん、夕ごはんも食べずに部屋に閉じこもってね。理由を聞いても答えてくれないし。お父さんは悲しい」

 おどけた感じで泣き真似をする大地先生。

 年頃の娘を持つお父さんは大変なんだな。

「ま、雑談は置いておいて、今日の響司くんの音色はすごくあたたかくて優しい。なにかいいことがあったのかな」

 音色が変わるような出来事なんて、考えてもなにも浮かばない。

 天啓が降ってくるなんておとぎ話めいたこともなく。

「これといって特別なことはなにも」

「そうか、自分では気づいていないのか。若いっていいね」

 訳知り顔でうなずく大地先生。