当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 ゆったりした歌声が聞こえる。

 まぶたを開くと、華音と目があった。

「おはよ、キョウジ」

「……おはよう華音。どれくらい寝てたかな」

「二十分くらい。もっとねててもよかったのに」

 指輪をした細い指先が、僕の髪をすく。

 僕は手を伸ばして、その手に触れる。

 僕の左手にも同じ指輪が光る。

「夢を見てた。僕らが出会った頃のこと」

 華音は目を細めて僕の手を取る。

「キョウジ、変わったよね。昔は手を繋ぐだけで照れて逃げてたのに、いまは子犬みたいに甘えてくるの」

「あはは、そんなこともあったね……」

 嘘の恋人を演じていた頃、クラスメイトにからかわれてとっさに華音がそんな嘘を吐いた。

 嘘から出た真とでもいうのか、華音といるととても落ち着く。

 こうして、甘えていられるくらいに。