当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「沢くんって、友だちとしてならありなんだけどねぇ」

「ハハッ、すっげー含みある言い方腹立つわぁ。だから彼氏できないんだぞ」 

「仲居は基本女の人しかいないもん。男の人いても厨房のおじさん、おじいちゃんくらいだしさ。そっちの職場にいい人いたら紹介してよ」

「こっちは洗い場だぞ? 基本おばちゃんか、夏休みだけの高校生しかいねぇよ」

「うー、出会いがないぃ。私だってラブラブデートしてみたいよぅ」

 彼氏欲しいと連呼する姿に、笑うしかない。

「あ~、そうだ。沢くん年上の女性興味ない? 私の指導係してくれてたユメさんって、明るくて楽しいひとなの。フリーだって言ってた」

「つきあったら一挙一動葉月に筒抜けになりそうだから、なんかやだ」

 洗い場のおばちゃんも、暇な時間帯になると旦那のグチ言ってくるもん。

 ユメさんとやらがおばちゃんと同類とは思わないけど、警戒したくはなる。