当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 僕は華音の手を取って一歩ふみだす。

「殿、この先の茶屋で甘味などいかがでしょうか」
「うむ、よいこころがけだ」

 さすが大河ドラマ大好き娘。

 普通の日本語で話すより、時代劇みたいに古めの言葉のほうが反応が早い。

 なんだか面白くて、かわいいな。

Papa(パパ)が、帰りにたこせん買ってきてって言ってたから、そこも行く」

「あはは。承知しました」

 手を繋いで歩くと、景色がさっきよりも鮮やかに見える。

 ピコン、とスマホの通知音が鳴って華音がバッグを探る。

「キョウジ。葉月さん、明日みんなで七里ヶ浜行こって」

 僕のスマホも鳴って、沢からだいたい同じような内容のメッセージが表示された。

「コンクール終わったんだからヒマだろ? まったく、失礼だなぁ」

『ごめん、演奏会近いから練習したい。遊ぶのは終わってからにしよう』と返す。

 ぷんぷんと怒るヒヨコのスタンプが返ってきた。

 この様子なら全然怒ってなさそうだ。

 沢と葉月、付き合い始めたんなら二人のデートを楽しめばいいのに。

 なんで僕らを呼ぼうとするんだか。