当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「むー、なんで照れてる? あたしのために舞台でカノンとIch(イッチ) liebe(リーベ) dich(ディッチ)弾いてたのに、なにがはずかしい」

「だ、だってあれは……その」

 言葉がうまくでない僕にとっては、音楽が唯一の本音だ。

 華音は僕の腕を引っ張って、南京錠を持たせる。

 錠をはめて、僕らのかけた南京錠はこの丘を彩る誓いの中に混じった。

「これからずっと一緒なら、いつかキョウジ、おはようのチューくらいするようになる?」

「あまりそういう期待はしないで……」

 本当の恋人になったところで、僕は僕でしかない。

 横井みたいにひと目もはばからず抱きしめてキスなんてできるわけもない。