当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 もう僕らの分をかけるスペースがなさそうなくらいに、びっしりと南京錠がかかっている。

 錠には赤やピンク色をしたハート型プレートがくっついている。

『ずっといっしょだよ』とか『結婚しよう』とか、それぞれの思いが書き込まれている。

「華音もさっき売店で書いていたよね。いいかげん見せてくれてもいいんじゃない?」

 華音が書いてすぐ、南京錠ごとショートパンツのポケットに隠したから、僕はプレートの中身を知らない。

「えへへ。これ、覚えてる?」

 華音は口角を上げてプレートをひらひらさせる。

 meine geliebte
 kyoji & Kanon

 名前の上に見覚えのある単語が書いてある。

「僕が華音の誕生日カードに書いた言葉?」

 あのときは、店長の歩さんが書いてくれたお手本をそのまま写した記憶がある。

「なんでこのプレートに書くの?」

「これ、愛する人って意味。誕生日カード、僕の愛する華音へって書いてあってビックリしたよ」

「はぁ!?」

 もしかして初田さんがなにか言いたげだったのってこういう意味だから?

 歩さんがやたら楽しそうだったのって、そういうこと?

 なんであのとき翻訳しなかったんだ、僕!