当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 龍恋の鐘は、"恋人と二人で鳴らし、フェンスに南京錠をかけると幸せになれる"と言われている恋愛スポットだ。

 天女と五頭龍の恋の伝説が残る、由緒ある場所でもある。

 華音が「あたしのPapa(パパ)Mama(ママ)も昔ここで愛を誓ったんだって!」と言って、どうしてもここに来たがった。

 子どもの頃に両親と何度も来ていたらしくて、華音のほうが江ノ島に詳しい。

 マップを見ることなく、僕を案内してくれた。

「僕、生まれたときから湘南にいるのに、こういう場所があるって知らなかったな。昨日、父さんと母さんにここに来ること話したら泣きだしちゃったよ」

「それでこそキョウジね」

 華音は鼻歌をうたいつつ、僕の手ごと鐘の紐を振り回す。

 金属特有の心地良い高音が海辺に響き渡る。

「よーし! ひとりじめよくないから、フェンス行こ!」

 満足気に笑って、華音は専用フェンスに向かう。