当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 ちょっと離れたところにいた父さんと母さんが右手をひらひらさせる。

「響司、おれとゆーちゃんは先に帰るから、彼女をしっかりと家まで送ってやるんだぞー。家に帰るまでがデートだ」

「ちょ、ちょっと待って父さ……」

 僕が止めるのも聞かずに行ってしまった。

 華音は渦中の人のもう一人なのに、僕の隣でずっと笑っている。

「キョウジ、ごはんたべて帰ろう。帰るまでがデート、Papa(パパ)さん言ってた」

「言ってたけど」

 財布もあるし、スマホに交通ICも入ってるからレストランで食事できるし問題なく帰れる。

 金銭的に問題ないけど、いたたまれない。

「さ、行こうキョウジ」

「……どこで食べるの?」

「あたしおはし使えないから洋食がいい」

 そういえば、華音が箸を使っているところをみたことがない。

 お弁当はいつもサンドイッチだったし、華音の家でもパン食だった。

「僕はあまり詳しくないから、華音が入りたいところでいいよ」

「ならこれから駅に行って、最初に見つけた洋食のお店にしよ。ね?」

「いいよ」

 華音は僕の腕に抱きついて、意気揚々と歩き出す。

 こうして僕らは、嘘の恋人から本当の恋人になった。