当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「……やっぱり、今がいい。華音が好きだから」

「うん、あたしもすき。キョウジといたい」

 手を繋いで、どちらからともなく笑い合う。

「ブラボー!」とどこからか声援と拍手が聞こえてきて、振り返れば、コンクールを聞きに来ていたお客さんたちがいた。

 そうだ、ここはコンクール会場、つまり公衆の面前。

 頭が真っ白になった。

「うわあぁあ、すみません、すみません、人前でお恥ずかしいところを」

「いやはや、あの曲を弾いたのは恋人のためだったか。うんうん、若いなぁ」

 近くにいたご夫婦の旦那さんがしきりに頷いている。

「そうね、わたしたちの若い頃を思い出すわぁ」

 奥さんもなぜかハンカチで涙をふいている。

 早くどこかに逃げたい。