当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー


 華音はクスクス笑う。

「キョウジ、すごく高いもんね。バスケする人、だいたい高いから、そう見えたのかも」

「そうかも。ピアノやってるって答えたら、「バスケ部と兼部しないか」って言われた。それがきっかけで話すようになったんだ」

 沢と話すようになって半月も経っていない。

 なのに、振り返ると懐かしい気持ちになる。

 華音は二杯目のコーヒーを飲みながら、ちらりと僕を見る。

「キョウジは、優しいね。だって、葉月さんがサワのこと好きになっても、サワのこときらいになってない」

 沢から『葉月ちゃんのこと好きになっちゃった。葉月ちゃんのこといろいろ教えてくれないか』とメッセージをもらったときに、『僕も葉月のこと好きだから協力できない』と答えていたら、どうなっていただろう。

 僕がどう答えようと、葉月と沢が惹かれ合っていることは変わらない。

「……優しいんじゃないよ。僕は」

 失うのが怖くて結局何も選べず、流されるだけ。
 僕は、ただの臆病者だ。