当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 コンクールの授賞式が終わりエントランスに出ると、華音が助走をつけて飛び込んできた。

「キョウジ、銀賞おめでと!」

「わわっ」

 転びそうになるのを、なんとか踏みとどまる。

 華音はまっすぐに僕の目をのぞき込んできた。

 夜空みたいな深い青のロングドレスがよく似合っていて、目が離せない。

 息をするのも忘れるくらい、きれいだ。

「……なんで、あの曲を弾いてくれたの?」

 こんなふうに気軽に華音と話せるのも、今日で最後なんだ。

 なんでもっとはやく、気付かなかったんだろう。

「……今日弾かないと後悔すると思ったから」

 華音の手に、手のひらを重ねる。