当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「響司くん……」

 大地先生はなにか感じたのか、じっと僕を見て、最後には折れてくれた。

「……響司くんがここまで我を通すのは初めてだし。君がそうしたいのなら、その二曲でいってみようか。コンクールは来年もあるんだし」

 本当は止めたいと、顔に書いてある。

 けれど大地先生は何も言わず、僕の選択を後押ししてくれた。

 家に帰ってからすぐにピアノに向かう。

 譜面通りに弾いているのに、違和感があるというか……華音に届けるための何かが足りない。

 ノックの音がして、母さんが入ってきた。

「夕食の時間よ、響司。なにかお腹に入れないと、体が持たないわよ」

「……うん」

 言われてようやく、お腹が空いているということに気づいた。