当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 華音のおばあさんのところ、オーストリア。

 そこに行くのは、ずっと前から決まっていた?
 
 この夏が終わったら、華音とはもう会えなくなる?


『キョウジ?』

「あ、うん。なんでもない……。ごめん、負担になるよね。そろそろ切るよ。おだいじにね」

 バックライトの落ちた画面に、僕が映る。

 手が震えていて、あやうくスマホを落としそうになった。

「響司。華音ちゃん具合悪いの?」

 母さんに聞かれて、慌てて答える。

「あ、うん。一昨日インフルになって、まだ熱下がってないって。長話すると迷惑になっちゃうから、予定だけ伝えた」

 うまくごまかせたかわからない。

 胸がざわざわして、息がしづらい。

 どうしてこんなに、苦しいんだろう。