当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

『キョウジ! どうだった!?』

 ワンコールで華音が出た。

「か、華音、もしかして待ってた?」

『キョウジに電話しようと思ってスマホ持ったら、鳴った』

「なんだ、華音も電話しようとしてたんだ」

 タイミングがよすぎて笑ってしまう。

「本選も通過したよ」

『おめでとキョウジ! あたし、お祝いにクーヘン焼くよ』

 熱のせいか、いつもよりは掠れているけど、華音の声は弾んでいる。
 
「ありがとう。……体調悪いときに連絡してごめん、まだ熱あるよね」

『ううん。ききたかった』

 張り紙の予定表を見て、次の予定を華音に伝える。

「……全国大会、八月二十日だって」

『はつか。……そっか』

 華音が言いよどんだ。

 都合が悪いのかな。

『あ、行けないわけじゃない、ただ、ぎりぎり、だったから』

「ぎりぎり?」

 華音は少し迷いながら、続けた。

Oma(オマ)のとこ行くの。レオ、飛行機乗れるくらい大きくなったから。Papa(パパ)が去年からチケットとってた』