当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 星がうっすらと見え始めた空のもと。

 稲村ヶ崎の海岸線を歩けば、遊歩道にたどりつく。

 穴場だとは聞いていたけれど、多少は人がいる。

「レオ、かたぐるましようか」

 小さなレオでは視界が人で埋まって花火が見えなさそうだ。

 提案したら、レオはすぐに飛びついてきた。

「いいの? する!」

 かがんでレオを担ぐと、レオはきゃっきゃと笑う。

「わぁ! すごいねきょーくん! おそらがひろい!」

 華音はどこか申し訳なさそうに聞いてくる。

「ごめんね。キョウジ、重くない?」

「大丈夫だよ。それに、こうしてると迷子にならないでしょ?」

「そう、だね」

 華音は言いながら、僕のシャツのすそをつまんだ。

 顔を赤らめ、僕から視線をそらす。

「……はぐれたら、こまるから」

 手を、繋ぎたいな。 

 そんな気持ちにかられて、そっと右手を差し出してみる。

「そ、そうだね。はぐれたらたいへんだ」
 
 華音はまばたきしたあと、おずおずと僕の手を取る。

 繋がれた手はとてもあたたかい。

 なんだか気恥ずかしくて、視線を空に移す。