当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 沢くんはなにしてんだろ。

 ためしにスタンプを送ってみる。

『いま暇?』

『マンガ読んでるから忙しい』

 おばかさんみたいなコメントがきた。

『つまりそれ暇じゃない』

『何言ってんだ、ダンクは人生のバイブルだぞ。一巻から最後まで一気読みするのがマスト』

 湘南を舞台にした伝説のバスケマンガの名前が出てきた。

 日曜にマンガ全巻一気読みするの、どう考えても暇じゃん。

 ばかなの?

 画面を見ながら笑っちゃう。

『そーだ。明日ヒマなら昼休みに体育館来いよ。シュートを教えてやろう』

『なにその上から目線』

『授業で役立つときが来るかもしれねーだろー』

『まあいいけど』

 中身があるようでない会話がポンポン飛び交う。

 沢くん相手だと気を遣わなくていいから楽だな。

 いまはこの軽さがいい。

 沈んでいた気分が、少しだけ浮上した。