当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 僕もコンクールに参加するようになって十年。

 最初の数年はよく見た顔が、いつの間にか来なくなったのも一度や二度じゃない。

 葉月も、自分に向いてないからとやめた。

 やめた人たちに、「続ければいいのに」なんて無神経なこと、僕には言えない。

 家庭の事情で辞めたのかもしれないし、先生が言うように挫折した人もいるかもしれない。


「これから先も神と呼ばれるか、平凡に終わるかはあなた次第よ。羨望とか、妬みとか、見えない重圧が常にかかる。それに打ち勝たないといけないの」

 コンクールに出るたびに、言われてきたことだ。

『もてはやされるのは、今だけ』

『音大や留学なんてお金がかかるんだから、諦めるなら今のうちよ』と。

 僕のことを心配しているようでいて、諦めろと暗に言っている人がたくさんいた。


 でもそんな呪いみたいな言葉を吐く人がいる一方で、光をくれる人もいる。

 父さん、母さん、大地先生。

 そして、華音。

 僕の夢を聞いて、真っ直ぐな瞳で「キョウジならできるよ」と言ってくれた。

 だから、僕は舞台に立てる。