当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 母さんが毎日たまごを焼きながら、「丈二(じょうじ)さんたらねー」と、のろけてくる。

 父さんも父さんで「ゆーちゃんのたまご焼きは絶品だからなー。一日五回は食べたい」なんて言うから似た者夫婦だ。

 息子の前で毎朝繰り広げられるのろけ劇場。

 僕の両親は特殊すぎて、恋人らしいやりとりと参考にならない。

「そんなにおいしいの? プロポーズしちゃうくらい?」

「食べる?」

「いいの?」

「いいよ。僕は毎日食べてるから、遠慮しないで」

「そ、それじゃあ」

 華音は恐る恐る、ピックでさしてたまご焼きを口に含んだ。

 とたんに、とろけるような幸せそうな表情になる。

 じっくり味わって、名残りおしそうにしながら飲み込んだ。
 ハムスターみたいで、なんだかかわいい。

「んー! guat(グアット)! キョウジ、これ、キョウジのmama(ママ)にたのんだらつくりかた、おしえてくれる?」

「たぶん」

 母さんの料理をこんなにほめてもらえるなんて、なんだかくすぐったい。