当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「たしかに響司くんはあの頃に比べて体格も格段に良くなったから、違う解釈で弾くのも手だ。譜面を正確になぞるのではなく、今の君なりの解釈で」

 この楽譜には、小学生の頃の僕が書き込んだメモが端々に入っている。

 なんだかすごく懐かしい。

「どの程度覚えているか確認したいから、弾いてみてくれるかな。場合によっては予定通りトロイメライでいくから」

「……はい」

 ピアノの蓋を開けて、椅子を調節する。

 楽譜を台に置いて、カノンを奏でる。

 自然と、この曲を習った頃のこと、これまでのことを思い出す。

 輪舞曲のように、くるくると記憶が浮かんで、めぐっていく。