当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 店の前の立て看板にはチョークで日替わりやおすすめメニューが書かれている。

 かわいらしい文字で書かれた『チーズケーキ&ガトーショコラ ドリンクセット』を見て目を輝かせる。

「これ! ふたつたのしめてオトクよ」

「でもカップル限定って……」

「いいの!」

 店員に案内されてテラス席に出た。

 晴れているから風が気持ちいい。

「これ、あたしはコーヒーで」

 華音は店員から渡されたメニュー表の表紙を指して即決。

「お連れ様はどうなさいますか?」と聞かれて、反射的に答える。

「僕も同じものを」

「かしこまりました」

 メニューを下げて、サービスで水を出してくれる。

 グラスの中で氷がまわり、パキンと音を立てた。

 表面の結露がコースターに滴る。

 何を話そうか考えていたら、華音が急に左手を出した。