当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 コンクール当日。

 父さんが地区予選会場まで車で送ってくれた。

 控室にいると、他の奏者の音がきこえてくる。

 壁越しに聞こえるだけでもみんなうまい。

 テンペスト、月光、ソナタ四番……。

 予選の課題がベートーヴェンのソナタのいずれか一つだから、みんな速さや技巧を見せられる曲を選んでいるようだ。

 ……弱気になっちゃ駄目だ、芯を強くもっていかないと。

 ついに僕の番がきて、ピアノの前に座る。