当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 初田さんはスーツの上着から懐中時計を出して劇場の扉を見る。

「そろそろです。さあ、行きましょう、レオくんのお姉さん。終わったら響司くんをカフェにでもさそうといいですよ。ここのケーゼクーヘンは絶品ですから」

「……danke(ダンケ)。ミツキちゃんパパ、すごいセンセね」

「光栄です」


 心はここに来たときよりも晴れやかで。 

 あたしはゆっくりと立ち上がる。

 扉を開けて、空いた席に座る。

 キョウジが名前を呼ばれて、ピアノの前に歩み出てきた。

 キョウジの演奏が、はじまる。