当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 バレッタのフレーム部分、銀細工にふれるとひんやりする。

 キョウジの優しさ、たしかなものが、ここにある。

 おめでとうの一言だけで済ますことだってできたのに、キョウジはあたしに贈り物をしてくれた。

 もらったとき嬉しくて、飛び跳ねたくなるくらいだった。

 家族以外の誰かからの誕生日プレゼント、初めてだった。

 わざわざ練習して、ドイツ語でおめでとうも言ってくれた。

 ほんの少しでも、あたしのこと気にかけてくれたのが幸せで。



 この幸せな時間が終わるのは、離れるのは、嫌。

 もっと、一緒にいたいよ。
 キョウジのそばで、キョウジが弾くピアノを聴いていたい。

 これからさきも、ずっとキョウジのそばにいたい。