当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「名前をつけようがない生き方をしていたと思います。わたしたちは結婚するまで、なんと呼ぶ関係なのかわからなかった。兄妹ではない、親子でもない。医者と患者というには近い。けれど恋人というわけでもない」

 結婚する前の初田さんとミツキちゃんママ。

 どんな関係と呼ぶのか、あたしも聞いていてわからない。

 名前がつかなくても、おたがいとても大切だったんだろうな、って思う。  

「関係なんていう形のないものに、どんな呼び名をつけようと、意味はないのですよ。大事なのは、気持ち。あなたの目に見えているものです」

 初田さんは微笑んで、あたしのつけているバレッタに視線を移す。

「SNSが発達した時代ですから、お祝いならおめでとうのスタンプひとつで事足りるんです。でも、響司くんはお店まで足を運んで、一所懸命悩んで、バレッタをあなたに贈った」

 
 初田さんの言葉は、不安に潰されそうになってたあたしの心にしみてきた。