当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「……あたしとキョウジ、わけがあって、恋人のふりしてた。でも、さいきん、嘘吐く理由、なくなったの。だから……ふりは、終わりにしないとって、思って。あたし、形だけのカノジョだから。ここにも、来ないほうが良かったかも。聞く勇気、ないの」

 言葉にしたら、涙が出てきた。

 キョウジが「もう一緒にいる必要ない」なんてひどいこと言う人じゃないことくらいは、短い付き合いだけどわかってる。

 でも、どうしても、ふあんになる。

 涙が止まらない。

 うつむいてしまったあたしに、初田さんはきれいにアイロンがけされたハンカチをさしだしてくる。

「なぜ人は、肩書きという見えないものにこだわるのでしょうか」

「え……?」

 初田さんは自分の左胸に手を当てて、話し始めた。

「十五年前のことです。わたしは入院中の母の代理で、引いおばあちゃんのお葬式に出席しました。そこで、遠い親戚の少女と出会ったんです」

 あたしもおじいちゃんのそうしき、でたことがある。

 顔も名前もわからないくらい遠い親戚の人がたくさんいた。

「少女はネルさんと言いまして、まだ高校生なのに、病を抱えていました。完治させる薬も存在しない、とても難しい病気です。家族だけでは介助ができなかった。なので、わたしが引き取り闘病を支えることにしました」


 顔見知りでしかないあたしを心配して話を聞いてくれるくらいだもの。

 親戚の子が病気なら、それくらいはしそう。