当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「それで、どうしてここに? もうすぐ響司くんが演奏する時間ですよ」

「…………あたしにそんな権利、あるのかなって」

 キョウジの演奏を聞く権利、ここにいる権利。

 ないような気がしてくる。

「はて。このコンクールは一般入場は自由ですが。彼女さんが聞いてくれなかったら、寂しいのではないですか?」

 あごに手を当てて考える初田さん。

「でも、かたちだけ、だから」

 ずっと悩んでいたこと、うっかり言ってしまった。

「……話してみてください。これでも精神科医です。聞いたことは誰にももらしません」

 初田さんはあたしの斜め向かいのソファに腰を下ろした。

 そういえばレオが言ってたな。

「ミツキちゃんパパはこころのおいしゃさんなんだよ」って。

 ミツキちゃんはいつも、幼稚園でおままごとをするときに、パパのまねをしているらしい。

 初田さんはほんとうに、誰にも言わないでいてくれる気がする。

 だから、自分以外のひとなら同じ状況でどうするか知りたくて、少しだけ話す。