当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 しばらくお互い無言だった。

 私はからっぽになったジュースのボトルを手の中でくるくる回す。

「…………私さ、この一週間が終わったら、『試しに付き合ったけどソリが合わなかったみたい』って響司くんに言えば、嘘ついたこと帳消しにできるんじゃないかなってちょっとズルいこと考えてた。そしたら、今度こそ言えるかなって」

 放課後、夕暮れの教室で
『沢くんとお試しで付き合って、私が好きなのは響司くんだったって気づいたの』
 なんて言えたら、ロマンチック。流行りの少女マンガみたいでしょ?


 でも、今。

 沢くんと話してそれは間違いだって気づいた。


「私、自分勝手だった。そんなことしたら、響司くんは苦しむし、華音ちゃんが悲しむ。華音ちゃんの笑顔を奪ってまで、私は響司くんの隣に立ちたいの?」

 そんなの、私が一番嫌いなタイプの人間だ。


 これが、マコトちゃんに聞かれた問に私が出した答え。

 響司くんの中で、友だちの恋人を奪おうとする悪女として記憶されるなんて絶対に嫌。

 一目惚れした人のために頑張る、きれいな葉月でいたい。
 たとえそれが、嘘で塗り固めた姿でも。