当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 帰り支度をしていると、沢くんが教室に入ってきた。

「これ、やる」

 ぽんと投げられたものを受け取る。

 自販機で売ってるリンゴジュースだった。

「弁当の代金」

「代金って。私、お礼して欲しくてお弁当作ったわけじゃないんだけど」

「人に物をもらったら対価を払うもんだって、おふくろがいつも言ってたし」

 そんなこと言われたら、返すの悪いじゃない。

「ふーん。くれるって言うなら、もらっとくね」

 プルタブを開けて一口。
 すっきりした甘さが喉を通っていく。うん、美味しい。

「お、リンゴジュースが正解だったか」
「なにが?」

 突拍子もないことをいわれて首を傾げる。

「春先に四人で勉強会したろ。あんとき俺がコーラを買ってきたら、めっちゃ嫌そうな顔してたじゃん」

 あちゃー。炭酸嫌いなの顔に出ちゃってたかー。