当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 四時間目の授業がおわり、教科書を片付けていると、華音が教室の入り口からひょっこり顔をのぞかせた。

「あれ、阿部じゃん。どうしたよ」

 僕の隣の席の沢が、華音に気づいて声をかける。

「キョウジに会いに来た。一緒にごはんたべるやくそく」

「昨日、付き合うことになったって言ってたもんな。いやぁ、阿部と響司なら趣味も同じみたいだし、絶対気が合うと思ってたんだ。おめでとさん」

 日差しのような明るい笑顔で、祝福してくれる。

 一瞬、言葉を失う華音。

 早くこの場から逃げたいんだろう。

 ぎこちない笑顔を浮かべて僕の袖をひっぱる。

「……うん、そう、あたしたちすごく仲良し。キョウジ、はやくいこ?」

「うん。今いくよ、華音」

「はれてるから、校庭でたべたい」

「いいね」

 最初に会ったとき私服だったから、ブレザーの華音は新鮮に見える。

「え、当馬くんって阿部さんと付き合ってるの?」

 クラスメイトのひそひそ声と探るような視線を感じながら、教室を出た。