当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 体育祭の代休日。

 ピアノのコンクール地区予選目前ということもあって、レッスン室の空気はいつもより張りつめていた。

「まだ強い。そこは、もう少し肩の力を抜いて」

 大地先生の低い声が飛ぶ。

「はい」

 言われた通りに弾き直す。

 悲愴第二楽章は平和を願う、やすらぎの音色。

 ピアノやピアニッシモで弾く部分が多い。

 けれど弱いだけでなく、強く引く部分もある。 

 力加減を間違えないよう、指先に神経を集中させる。

「もう一度はじめから通しで弾いて」
「はい!」

 指示された通りに、弾き直す。

 ——そのとき。

 かすかに、何か嫌な臭いがした。