当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー


「親父、おけーり」
「おう。なんだ須直。サボりか?」
「ちげーし。代休」
「あー、昨日だったな、体育祭。ごくろうさん」

 
 親父は靴を脱ぎ捨て、俺が飲もうとしていた牛乳のコップをあおった。

「あ! 俺の牛乳!」
「けっけっけっ。早いもん勝ちだ。まだあるんだから入れ直して飲みゃいい」
「クソ親父」

 ムカつくから親父の尻をけりあげる。
 この人昔から大人気ないんだよな。

「誰がクソ親父だ。そういう生意気なこと言うなら、土産に買ってきた弁当やらんぞー」

 親父がビニール袋から、海老名サービスエリア限定販売の弁当を取り出した。

 カツがめっちゃうまいやつじゃん!
 釣られるのは腹立つけど、うまいもんは正義だ。
 媚の一つや二つや一万個くらい売ってやる。

「よっ、日本一のイケメン直之《なおゆき》サマー。お恵みを!」
「手のひらくるっくるすんなバカ息子。食う前に母さんに挨拶するぞ」

 親父は俺の頭を小突いて、電話機の隣に置かれた写真立てを指す。

 親父は写真に手を合わせて

「今日も須直はアホだった」

 なんてぬかしやがった。