当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「ねえ華音。来週、コンクールの地区予選があるんだ。一般観覧も受け付けてるから、来てくれない?」


 華音は戸惑いながら、僕を見上げる。

「……いいの? あたしが行って、迷惑じゃない?」

「うん。華音に聴いてほしい。華音が会場にいてくれたら、がんばれるから」 

 言葉が通じない遠くの国や、いろんな人に音楽を届けたいと思って始めたピアノ。

 今はただ、目の前にいる華音に聴いてほしい。
 華音に届けたい。

 いつから、そう思うようになったんだろう。


「……うん、あたしも聴きたい。キョウジのピアノ」


 不安に曇っていた華音の顔に、ようやくほのかに明るさが戻った。