当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 ……そうか、華音はまだ、沢のこと好きなんだ。

 こんな場面をみて、ショックを受けてしまうくらいには。

 どうしてだろう。

 沢が葉月を連れてきたことよりも、華音がショックを受けたことに対して、胸がざわついた。

「え? 相手を間違えてない? 罰ゲームでもしてるの?」

 葉月は『沢くんのこと好きになっちゃったの』と言っていたはずなのに、笑顔とはいいがたい表情になっている。

 眉間にシワを寄せているし、声が普段よりワントーンも低い。なんなら一歩引いている。

 どう読み取っても、喜んでいるふうには見えない。

 ふつう、好きな人にこんな告白まがいのことされたら喜ぶものじゃないのか?

「あはは、そんな顔すんなってー。うち親父が見に来てないから、連れてこれないし。葉月ちゃん連れてくるのって無難な選択だったと思うんだよ」

 沢も告白のチャンスのはずなのに、なぜかそんな言い訳をはじめた。

 本来の選択肢がなかったから仕方なく葉月を連れてきた、みたいな。

 嫌われたいんじゃないかぎりは、そんな言い方しないだろう。