当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 女子の借り物競走が終わり、ついに男子のレースが始まった。
 
 スタートダッシュが早い人がいる一方で、歩いてるのかというくらいだらだら走る人もいる。

「おら清水! 真面目に走れー」と体育教師のカツが飛ぶ。

 運動が得意だろうとそうでなかろうと、全員一種目以上参加しないといけないルールだ。

 僕のすぐ後ろに並んでいる男子は「あー、やだなぁ、おれ足手まといにしかならないし、はやく帰りたい」とぼやいている。

 体育会系の生徒ほど、やる気がみなぎっている。

 隣にいる沢がまさにそれだ。

 沢が赤のハチマキをしめなおしながら、ニヤッと口角をあげる。

「お、響司。次、俺達だぞ! 負けねーからな!」

「……バスケ部が帰宅部相手に何言ってんのさ」

 沢は普段から部活で走っているんだから、ピアノの前にずっと座っている僕じゃ相手になるはずもない。

 わかっていてもやってみたいのか、諦めてれない。

「いーじゃん。借り物競走なら簡単なお題引けりゃ勝ち確っしょ。さっきのレースだって、陸上部のやつ最下位だったしさ。このレースは足の速さなんて関係ない。てわけで、負けたほうが自販機の飲み物おごりな」

「えぇ……。まあいいけど」


 そんな話をしている間に、先生が右手を振り上げる。

「よーい、ドン!」

 みんなが勢い良く駆け出す。