当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 葉月は息を整えようとして、むせてる。

 なんどか深呼吸して、やっと顔を上げた。

 その目は辛そうで、とても真剣な色をしている。

「…………うそついて、ごめんね。もう、協力、してくれなくて……いいの」

「嘘? 何を言って……」


 とぎれとぎれで、何を言いたいのかうまく掴めない。
 でもなんだか、礼拝堂で懺悔しているみたいな、そんな真剣さがある。


 ずっとしゃがみこんでいる葉月を心配して、救護班のテントにいた先生がかけつけた。
 
「吉田さん、大丈夫? 貧血? それとも過呼吸でも起こしちゃった? 具合が悪くなったなら、保健室で休む?」

 すぐには答えられず、葉月は僕を見上げて、ためらいがちに手を離した。

 むりやりな笑顔を作って、先生に答える。
 
「……す、みません。もう、だいじょうぶ。あ、はは。ふだん、運動しないから。息が、あがっちゃった、だけです。すぐ、行きます」