当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 借り物競走は、一年女子のレースからはじまる。

 出走の合図とともに走り出して、カードを拾う。

 何が書いてあるのか、読んだ瞬間悲鳴に近い声がいくつかあがる。

 選手は観客席や生徒の応援席を見回して、札に書かれた人を見つけ出して走っていく。

 小さな女の子やおばあさん、さすがはわが校の名物行事。
 観客もレースの一員だ。


 そして第三レースでは横井の彼女がお題を拾うなり、男子待機列に突進してきた。

「よっちー! うちと一緒にきてーん!」

【好きな人】と書かれたカードをピラピラ振り回す。

「モチのロンだよりんりーん! 世界の果てまでフォーエバーラーブ!」

 語尾にハートを飛ばしながら、恋人繋ぎで駆け出す二人。

 人前であそこまで全力で愛情表現できるのは、むしろ尊敬に値するかもしれない。


 まわりの男子から、

「このバカップル!」
「もげろ横井ー!」

 なんて、とても応援と思えない声が飛び交う。
 笑い声もそこかしこから聞こえてくる。
 僕も笑いが堪えられない。